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奥野由紀子 主要レパートリーの曲目解説


フルーティスト・奥野由紀子が得意とする、あるいはレパートリーとして演奏している曲の一部を紹介します。

 


◆ピアソラ 「孤独の歳月」
Astor Piazzolla / Anos De Soledad (Annee de Solitude)

タンゴ界の巨匠、ピアソラが1954年パリに留学中、バリトン・サックス奏者、ジェリー・マリガンとの共演による録音アルバム「サミット」で一躍有名になった曲。後にフランス人マキシム・ル・フォレスティエが歌詞を付け、歌われるようになった。その後イタリア人歌手ミルバが取り上げ、CDに録音して大ヒットを収めた。


◆エルガー 「朝の歌」 
Edward Elgar / Chanson de Matin Op.15-2

イギリスを代表する作曲家エドワード・エルガーが作曲した短い曲で、オリジナルはヴァイオリンとピアノのための楽曲。後に作曲者自身の手によって管弦楽用に編曲された。1899年初版。同じくエルガーの楽曲『夜の歌』作品15-1と対比される。


◆ゴーベール 「ノクターンとアレグロ・スケルツァンド」
Philippe Gaubert / Nocturn and Allegro Scherzando

フィリップ・ゴーベール(1879-1941)は、フランスのフルート奏者、作曲家、指揮者。1919年からパリ・オペラ座の音楽監督に就任、パリ音楽院フルート科教授、パリ音楽院管弦楽団の首席指揮者を歴任。フルート曲で数多くの名曲を残している。この曲はパリ音楽院の卒業試験の課題曲として作曲された。曲の構成は前半のノクターンはロマンティックなフルートのメロディーが朗々と奏でられるのに対し、後半のアレグロ・スケルツァンドではテンポが一転急を告げ、速く軽快なリズムのフルートのダイナミックな演奏で盛り上がる。


◆イベール 「インテルメッツオ」
Jacques Ibert / Ent'racte (Intermezzo)

この曲は3分ほどの短い小品で、フルートとギターもしくはピアノかハープの組み合わせでよく演奏される。フルートパートは、息の絶え間なく疾走する速いフレーズが継続され、ギターが繰り返し伴奏で応じる。 


◆シャミナード 「コンチェルティーノ」
Cecile Chaminade / Concertino, Op.107

作曲者のシャミナードは、1857年パリに生まれ、父がヴァイオリニスト、母がピアニストで声楽家というパリ音楽院の教授に個人指導を受けたり、自宅のサロンに当時の一流音楽家を招いてコンサートを開くなど、音楽に恵まれた環境で育った。フランス国民音楽協会にデビューし、ビゼーやシューマンの影響の下、数多くの作品を作曲するようになり、当時の音楽愛謳歌の女性たちからの幅広い支持を集め、女性作曲家としては稀にみる、音楽で収入の道を得られる作曲家となった。この曲は1912年パリ音楽院コンクール課題曲として作曲され、原曲はオーケストラとフルートのために作曲された、単一楽章の曲。フルートとピアノのデュオでもよく演奏される。曲はゆったりとした明るい主題で始まり、主題が転調を重ねつつ、何度も大きな起伏を経て、短いカデンツァが奏でられる。その後、曲は速くなり華やかに終結する。乙女心の夢とロマンの世界を思わせるような作品。
★作曲家シャミナードについての詳細は、こちらに記載されています⇒ https://wan.or.jp/article/show/6505

 


◆タクタキシヴィリ 「フルート・ソナタ」 
Otar Taktakischvili / Sonata for Flute and Piano
(Ⅰ.Allegro cantabile  Ⅱ. Aria  Ⅲ.Allegro scherzando)

学生時代にグルジア国歌を作曲したタクタキシヴィリは、1924年にグルジア(現ジョージア)の首都、トビリシ生まれの20世紀の作曲家。トビリシ音楽院で作曲を学び、グルジア国立合唱団芸術監督、トビリシ音楽院院長、グルジア共和国文部大臣の要職にも就いた人物。このフルートとピアノのためのソナタは1968年の作品。グルジア民謡や民族楽器の笛のモチーフを織り交ぜ、リズミックで軽快な第1楽章、静寂なアリアが歌われる第2楽章、再び活気づいたリズミカルでエキゾチックなメロディーに乗せ、フルートとピアノの掛け合いが満喫できる第3楽章。全体に同時代のロシアの作曲家・プロコフィエフの音楽を想起させるリズミカルな作品。


◆ペリルー 「バラード」
Albert Perilhou / Ballade for flute and piano

ペリルー(1846-1936)は19世紀フランスの作曲家でオルガニスト兼ピアニスト。パリ音楽院卒業試験のための委嘱作品として、1903年に作曲された。タファネルに捧げられている。曲はフルートまたはヴァイオリンでも演奏される。


◆フォーレ 「ファンタジー」
Gabriel Faure / Fantasie Op.79

短いながらも、円熟期のフォーレの作品。1898年にコンクール用に作曲された作品で、タファネルに捧げられている。冒頭から独特のメランコリックなメロディーをフルートが朗々と歌い上げるが、後半のアレグロからは対照的に、速いスピードで主題と起伏のある展開部、表情豊かなメロディーが現れる。


◆ドビュッシー 「小舟にて」
Claude Debussy / En Bateau 

ドビュッシーの初期、1889年に作曲された4曲からなる管弦楽用のための「小組曲」(Petite Suite)の第1曲。ヴェルレーヌの詩『艶やかなる宴』(Fetes galantes)に触発されて書かれたと言われる。元来はピアノ連弾曲であったが、後に友人のアンリ・ビュッセルが1907年に管弦楽版に編曲してから一躍有名になった。フルートとハープまたはピアノで演奏されることもある有名な曲。湖水の上を優雅に小舟が通りすぎてゆくさまを見ているような、分散和音の上にフルートの主旋律が流れるところから始まり、中間部は水が飛び跳ねているような生き生きとしたダイナミックな音楽が展開される。

◆ボルヌ 「カルメン・ファンタジー」

Francois Borne / Carmen Fantasie

フランスのトゥールーズを中心に活躍したフルーティスト、フランソワ・ボルヌ(1840~1920)がビゼーの『カルメン』の中から抜粋した曲群をもとに、自ら開発した新式のベーム式フルート『ボルヌ=ジュリオ』の性能をデモンストレーションするために作曲した作品。構成は「カルメン登場」、第4幕のアリア「カルメン、まだお前が好きだ」「運命の動機」、第1幕のアリア「行ってきておくれ、セビリアの街へ」「ハバネラ」、第2幕「ジプシーの歌」「闘牛士の歌」を編曲し、メドレー編成したものとなっている。


◆プーランク 「フルート・ソナタ」
Francis Poulenc / Sonate pour flute et piano  FP 164

(I.Allegro malinconico  Ⅱ.Cantilena  Ⅲ.Presto giocoso)

フランスの現代作曲家プーランクが、1956年から翌1957年にかけて作曲された室内楽曲。彼の代表作のひとつ。1957年に名フルート奏者ジャン=ピエール・ランパルと作曲者自身のピアノにより初演された。アメリカのピアニスト兼芸術家の支援団体で、プロコフィエフなどにも作品委嘱をしていた、エリザベス・スプレイグ=コーリッジ財団が、同年秋に予定されていた室内楽音楽フェスティバルのために、作曲者に委嘱した作品。短三和音の分散和音形のモティーフから始まる第1楽章は、中間部の技巧的なフルート・パートが印象的である。第2楽章では、ピアノの和音連打の伴奏が、フルートの息の長い旋律を支えていく。第3楽章では途中にゆったりしたテンポの部分を一瞬挟みつつも、急速なテンポでソロとピアノが掛け合いを繰り返し、最後まで勢いを保ったまま駆け抜けていく。


◆バートン 「ソナチネ」
Eldin Burton / Sonatine

(Ⅰ.Allegretto grazioso  Ⅱ.Andante sognando  Ⅲ.allegro giocoso)

エルディン・バートンは、アメリカの作曲家でピアニスト。ニューヨークを中心に活動を展開。この曲は1948年にニューヨーク・フルートクラブ・コンテストで賞を得た作品で、フルーティストのサミュエル・バロンに献呈されている。第1楽章は軽快なフルートのメロディーと、中間部でのピアノのモチーフのやりとりが展開される。第2楽章はフルートによる上品なメロディーが奏でられる。第3楽章ではスペインの舞踊 「ファンタンゴ」 のリズムが効果的に用いられ、軽快な曲調でフィナーレを迎える。

◆イアン・クラーク 「ザ・グレート・トレイン・レース」 
Ian Clark / The Great Train Race

フルート・ソロのための現代音楽作品。題名の通り、列車が走り抜けていく様子を、フルート奏者がブレストーンや重音奏法、フラッターやハーモニクス、循環呼吸や発声奏法、微分音やカラートリル、尺八奏法など、現代奏法のテクニックを次々と駆使し表現ながら演奏を展開する、圧巻な単一楽章の曲である。イアン・クラークは1964年生まれのイギリスの気鋭の作曲家でフルート奏者。欧米の大規模な国際コンベンションでもゲスト・プレーヤーとして演奏している。2005年にリリースしたCD「Within...」はフルート界のベストセラーとなったほか、2013年リリースの「Deep blue」は、オリジナル・フルートのアルバムでは初となる英国のクラシック・アーティスト部門トップ10にランクインを果たした。クラシック・オペラからロックバンドのゲスト・プレーヤーに至るまで幅広い活動を展開。現在、ロンドンにあるギルドホール音楽演劇学校で教鞭を執る。

◆モーツァルト/ フルート四重奏曲 第1番 ニ長調
W.A.Mozart  / Flute Quartet No.1 in D-Major K.285
(Ⅰ.Allegro Ⅱ.Adagio  Ⅲ.Rondo)

1777年(21歳)の時、モーツァルトが職探しのために母親とパリに行く途中、ドイツのマンハイムに4か月半滞在した際に作曲された曲。モーツァルトが現地の名門宮廷オーケストラの名フルート奏者ヨハン・バプティスト・ヴェンドリングという人物らと親交を結んだ時に、彼から紹介された当時の富裕商でフルート愛好家であったオランダ人のフェルディナント・ドゥジャンの依頼で書いた、2つのフルート協奏曲と3つのフルート四重奏曲のうちの最初の作品である。第1楽章はソナタ形式。冒頭から有名な特徴のある第1主題が奏でられ、その後弦楽器で第2主題が演奏される。その後展開部、再現部を通じてフルートが音楽を主導する。第2楽章は弦楽器群がピチカートで伴奏し、それに乗る形でフルートが憂愁に満ちた美しいメロディーを繰り広げる。第3楽章はロンド形式で、第2楽章終了と同時に切れ目なく明るい主題で始まり、その後フルートとヴァイオリンが交互に対話を繰り返しながら曲を展開し、最後は賑やかにフィナーレを飾る。

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